心が沈んだ時もバイオリンを弾く。
ゆっくり、小さい音で、休み休み、
生まれたての音は、水面のように気持ちを映す。
そしてぼんやりと反照する。
元気が出た時もバイオリンを弾く。
それでもやっぱりなるべくゆっくり。
じんわりと滲み出るように、音を紡ぐ。
ルドルフゼルキンが80歳の時、「やっとピアノの弾き方がわかった。指の重さで弾けばいいんだ」と自信満々に宣言し、その後彼は、生まれ変わったかのように美しい音を奏で始める。
毎日毎日弾いていると、少しおかしな境地へ行ってしまうこともある。
ただ何か、当たり前を超えて行かないと見つけられない宝物があると思う。